「怠けている」わけではない――心理学の専門家が伝える、ナルコレプシーと職場の理解

「会議中、どうしても眠ってしまう。周囲からは、やる気がないと思われているようだ」

企業研修や個別の相談の場で、強い眠気に悩みながら、誰にも言えずに働いている方に出会うことがあります。その背景に、ナルコレプシーという睡眠の病気が関わっているケースがあります。この病気は、本人の努力や意志の問題と誤解されやすく、そのことが、症状そのもの以上に本人を苦しめることが少なくありません。

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眠気は「気合い」では解決できない

ナルコレプシーは、脳が覚醒を保つ仕組みに関わる睡眠障害の一つです。夜に十分な睡眠をとっていても、日中に強い眠気が繰り返し現れ、自分の意思とは関係なく眠り込んでしまうことがあります。

主な症状は、日中の強い眠気のほか、笑ったり驚いたりといった強い感情をきっかけに体の力が抜ける「情動脱力発作」、寝入りばなの金縛りや幻覚などがあり、症状の現れ方には個人差があります。大切なのは、これは意志の強さや生活習慣の乱れだけで説明できるものではないということです。

見えない症状が生む「誤解」

この病気の難しさは、外から見えにくいことにあります。

本人は、眠らないよう懸命に努力しています。それでも眠気が襲ってきたとき、周囲の目には「集中していない」「緊張感がない」と映ってしまいます。心理学の視点から見ると、ここで起きているのは、努力しているのに、その努力が誰にも見えないという状況です。

こうした誤解が積み重なると、本人は「自分がだらしないからだ」と自分を責めるようになります。症状に加えて、自己否定という二次的な苦しみが生じてしまうのです。

病気の周辺で生じる、心の負担

私が相談の場で感じるのは、眠気そのものと同じくらい、「また眠ってしまうのではないか」という不安が、働く人の心を消耗させるということです。

会議や商談のたびに緊張し、眠気と戦い続けることで、疲労が蓄積します。人前での失敗を恐れて、発言や挑戦を避けるようになる方もいます。また、強い感情が症状のきっかけになる場合には、喜びや笑いを無意識に抑えてしまい、人との関わりが窮屈になることもあります。こうした状態が続くと、気分の落ち込みや孤立感につながることがあります。

気になるときは、まず医療機関へ

ここで一つ、大切なことをお伝えします。強い眠気があるからといって、すべてがナルコレプシーというわけではありません。睡眠不足や、他の睡眠障害、ほかの病気が隠れている可能性もあります。

自己判断はせず、気になる症状があれば、睡眠を専門に診る医療機関に相談することが大切です。診断がつけば、症状を和らげる治療や、日常生活での工夫について、専門的な助言を受けることができます。心理の専門職は診断や治療を行う立場ではありませんが、受診をためらう気持ちや、病気と向き合う不安に寄り添うことはできます。

職場にできる、3つのこと

もし職場に、強い眠気に悩む社員がいたら、組織としてどう向き合えばよいのか。私が研修でお伝えしている視点は次の3つです。

  • 正しく知る——眠気を「怠け」と結びつけず、病気として起こりうることを理解する
  • 柔軟な休息を認める——短い仮眠や休憩が症状の助けになる場合があるため、働き方を一緒に考える
  • 話せる関係をつくる——病気を打ち明けるかどうかは本人が決めることを尊重し、話した情報は慎重に扱う

特別な設備や大きな制度変更が必要なわけではありません。本人と対話しながら、できる工夫を一緒に探す姿勢こそが、最も大きな支えになります。

「言える職場」が、人を守る

最後に強調したいのは、病気や不調を抱える社員が、安心して相談できる職場かどうかが、その人の働き続けられる力を大きく左右するということです。

「話したら評価が下がるのではないか」という不安があるうちは、人は症状を隠し、一人で耐え続けます。心理的安全性とは、弱さや困りごとを見せても、その関係性が壊れないという確信です。ナルコレプシーに限らず、見えにくい困難を抱える人が、安心して声を上げられる環境づくりが、組織全体の信頼を育てていきます。

講演でお伝えしたいこと

私の講演では、心理学の理論だけでなく、企業・組織の現場で得た知見をもとに、見えにくい不調を抱える社員への理解の視点と、職場で実践できる関わり方をお伝えしています。

「社員の強い眠気にどう向き合えばよいかわからない」「病気や不調を安心して打ち明けられる職場をつくりたい」——そうした課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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